家でおいしいコーヒーを飲もうと思ったとき、最初に買い足すのはたいていミルです。豆を挽きたてにするだけで世界が変わるので、それは正しい順番だと思います。
では、その次は何を買うか。
僕の答えは「はかり」です。しかも、キッチンにもう一台あるであろう普通のデジタルスケールではなく、コーヒー用のスケール。HARIOのV60ドリップスケールです。
正直、はかりに4,500円と聞くと身構えると思います。1,000円台のスケールはいくらでもありますから。それでも僕は、コーヒー用のはかりに関してはこれ一択だと思っています。
理由はひとつ、「時間」が測れるから

このスケールがただのはかりと違うのは、重さと時間を同時に表示してくれるところです。
ハンドドリップは、実は時間の仕事です。粉にお湯を含ませて蒸らす時間、そこから注ぎ切るまでの時間。この二つがずれると、同じ豆・同じ挽き目でも味は変わります。
ところが、いざ淹れはじめると手が足りません。片手にケトル、目はドリッパーの中の粉、そこへ「あ、タイマー押し忘れた」が加わる。スマホのタイマーを出そうとして、濡れた手で画面を触ってうまく反応しない。あの感じ、伝わるでしょうか。
V60ドリップスケールは、載せたお湯の重さと経過時間が同じ画面に並びます。だから、目線を一箇所に置いたまま「いま何グラム、いま何秒」を追える。たったそれだけのことなのですが、この「それだけ」でコーヒーの安定感がまるで変わります。

仕様は2〜2000g、時間は99分59秒まで計測できます。ドリップにもエスプレッソにも十分な範囲です。
味がぶれる原因は、たいてい腕ではない

料理を仕事にしていて思うのは、味がぶれる原因は腕よりも「条件のばらつき」にあることが多い、ということです。同じ人が同じ手つきでやっても、量と時間が毎回違えば味は揃いません。逆に言えば、量と時間さえ揃えば、はじめての人でもかなりのところまで再現できます。
道具で条件を揃えるのは、腕がないことの言い訳ではなく、腕を発揮するための前提を作る作業です。以前書いた包丁研ぎの記事(https://note.com/fujitayoshiki/n/nae67193a3ab6 )とまったく同じ話で、よく切れる包丁と、量と時間の揃ったコーヒーは、僕の中では同じ引き出しに入っています。
僕の使い方:エスプレッソでも活躍します

うちではハンドドリップだけでなく、エスプレッソを淹れるときにも使っています。
粉を何グラム入れて、何グラムの液体が何秒で落ちてきたか。ここが数字で分かると、次の一杯の直し方が分かるんです。「なんとなく薄い」が「粉が少なかった」「落ちるのが速すぎた」に変わる。原因の見当がつけば、挽き目を細かくするのか、粉を増やすのか、押し固め方を変えるのか、手の打ちようが出てきます。

このスケールは厚みが29mmと薄く、平らなので、マシンの受け皿の上に置いてカップを載せる、という使い方もしやすいです。
正直な弱点:はかりが2台になります
いちばん正直な弱点はこれです。計測範囲が2グラムからなので、1グラム台の微量は測れません。塩ひとつまみ、スパイスをコンマ単位で、といった使い方には向かないんです。
つまり、これを買っても料理用のスケールは手放せない。キッチンに、はかりが2台並ぶことになります。物を増やしたくない方には、ここは正直に引っかかると思います。
もう一点、この製品は防水をうたっていません。ドリップの周りはどうしても水を使う場所なので、濡れた手や湯こぼれには気を使います。電池式なのも、充電式に慣れた人には少し古く感じるかもしれません。
それでも「これ一択」と言うのは、重さと時間が一枚の画面に並ぶ体験が、値段の差をひっくり返してくるからです。
こんな人におすすめ
・ミルは買った、次に何を足そうか迷っている人
・「昨日はおいしかったのに、今日はなんだか微妙」を卒業したい人
・エスプレッソマシンを使っていて、抽出量をきちんと管理したい人
・人にコーヒーを淹れる機会がある人(毎回同じ味が出せると、単純に自信になります)
逆に、はかりは1台で済ませたい人や、毎回きっちり測るのが窮屈に感じる人には向きません。測ることが楽しくないなら、それは道具のせいではなく、単に相性の問題だと思います。
コーヒーを「なんとなく」から「だいたい狙ったところ」に持っていきたい人には、これ以上ないくらい素直な道具です。
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※この記事はnoteにも掲載しています。